14倍のはずが実タスクでは5.6倍──OpenAIが売り始めた『速度というSKU』とCerebras依存の内訳
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14倍のはずが実タスクでは5.6倍──OpenAIが売り始めた『速度というSKU』とCerebras依存の内訳

何が起きたのか OpenAIが2026年8月13日、APIの新しいサービス階層として「Ultrafast」の限定プレビューを告知しました。公式ページ『Previewing Ultrafast mode: GPT-5.6 Sol at up to 14X the speed』によれば、GPT-5.6 Sol をStandard処理の最大14倍の速度で走らせ、出力は最大750トークン/秒に達します(OpenAI 2026-08-13)。提供はまずOpenAI APIから始まり、現時点では「a select group of customers」への限定プレビューで、容量の増加に応じて拡大するとされています。 この速度を出しているのはGPUではありません。同日、Cerebrasが自社ブログ『Accelerating GPT-5.6 Sol Ultrafast』とプレスリリースで、Ultrafastが同社のウェハスケールエンジン(WSE、ウェハ1枚をそのまま1個のチップにする設計)上で動いていることを公表しています(Cerebras 2026-08-13、GlobeNewswire 2026-08-13)。Cerebras側は、Ultrafast版のGPT-5.6 SolはStandardと同じ知能で動く、と明記しています。 注目すべきは、新しいモデルが出たのではないという点です。モデルは同じで、売られているのは速度だけ。OpenAIは公式発表のブログ投稿で「Until now, getting real-time speed typically meant choosing a smaller or more specialized model.」と説明しています(OpenAI 2026-08-13)。TechCrunchも同じ文言を引用しています(TechCrunch 2026-08-13)。 速度が三層のSKUになった これでGPT-5.6 Solの速度プレミアム階層は3段になりました(別途、低速・割安のFlex/Batch経路もあります)。整理すると次のとおりです。 階層 速度(Standard比) 価格(Standard比) 実行基盤 Standard 1倍 入力 5ドル/M・出力 30ドル/M 非公表 Fast 最大2.5倍 2倍(入力 10ドル/M・出力 60ドル/M) 非公表 Ultrafast 最大14倍(最大750 tok/s) 未公表 Cerebras WSE 実行基盤について公式に確認できるのはUltrafastがCerebras WSEであることだけで、Standard/Fastの具体的なハードウェアは公開情報からは分かりません。 ...

2026年8月16日 · ひとりユニコーン
BLEURT 70は人間の64.6を超えたのか──DeepMind SL2Tが座標だけを送る設計と、ASL→英語だけという現在地
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BLEURT 70は人間の64.6を超えたのか──DeepMind SL2Tが座標だけを送る設計と、ASL→英語だけという現在地

何が起きたのか Google DeepMindが2026年8月12日、手話をテキストへ翻訳するモデル「SL2T」(sign-language-to-text)を公開し、Pixel 11のGboardとLive Transcribeに搭載すると発表しました(Google DeepMind公式ブログ)。Pixel 11は同日に予約受付が始まり、出荷開始は2026年8月20日のため、実際に手元で使えるのは出荷以降になります(Engadget 2026-08-12)。公式は「massively multilingual sign-language-to-text translation」モデルと位置づけ、学習データは50を超える手話言語・10万時間超、うち約25%がアメリカ手話(ASL)だとしています。 評価については、手話翻訳のベンチマークであるFLEURS-ASLのsd-testでzero-shot BLEURT 70を記録し、公式ブログはこれを「significantly higher than any previously reported score」と表現しています。製品側の提供範囲は現時点でASL→英語のみで、対応デバイスもPixel 11が先行、他機種は今後という段階です(SiliconANGLE 2026-08-12)。公式ブログは提供形態について「You can experience SL2T in Gboard and Live Transcribe first on Pixel 11, with more devices coming soon — all at no additional cost」と書いています。 BLEURT 70という数字をどう読むか BLEURTは、参照訳と生成訳の対を人間の評価スコアに回帰するよう学習された評価指標です。BLEUのように一致n-gramを数える設計ではないため、絶対値の解釈はチェックポイント依存で、本来はモデル間の相対比較に使うのが素直な使い方です。 それでも70という値を評価する足場はあります。FLEURS-ASLを提案した論文(arXiv:2408.13585, 2024-08-24、NAACL 2025)は、ASL→英語のcaption-levelベースライン(先行モデル)をBLEURT 33.6・38.6・40.3(zero-shot・signer-independent finetuning・signer-dependent finetuning)として報告しており、同論文自身の提案モデルはさらに高いBLEURT 37.2〜43.4を記録しています。機械側の数字を単一の範囲として一括りにはできませんが、SL2Tが主張する70はこれらのどの数字よりも高い水準です。同じ論文は「別の人間による翻訳」を参照訳と突き合わせた場合のスコアを64.6 BLEURTとして併記しており、70はこの人間側の目安も数値上は上回っています。 ここで注意が要ります。64.6という数字は「人間の翻訳能力の上限」ではなく、論文自身がモデル結果と単純に比較できる値だとも位置づけていません。FLEURS-ASLのASL動画はCertified Deaf Interpreter 5名が英語原文をASLへ訳して収録したもので、64.6 BLEURTは、DPAN経由で募集した「手話教育の専門的訓練・経験を持つネイティブのろう者ASL話者」1名が、その5名のsigner-dependent test setから各8記事・1文ずつ抽出した計40文のASLクリップを英語へ訳し戻し、その訳文をFLEURSの元の英語原文に対して採点した値です(arXiv:2408.13585)。論文のTable 2脚注は「the human baseline scores are not perfectly comparable…because they are for a subset of the data that is not necessarily representative due to the sampling method and small size」と明記しており、抽出法と40文という標本の小ささを理由に、人間ベースラインをモデル結果と完全に比較できるとはしていません。70が64.6を数値上は上回ること自体は事実ですが、この注記がある以上「人間を超えた」と結論づけることはできません。手話から英語への翻訳は言い換えの自由度が大きいことに加え、双方向の翻訳誤りや視覚的な曖昧性も差を生み得るため、人間対人間でもスコアは頭打ちになります。BLEURTで人間の数字を上回ったことは、学習済みモデルが参照文との意味的な適合度を高く評価したことを意味するのであって、通訳者と同等の理解に到達したことを意味しません。 ...

2026年8月13日 · ひとりユニコーン
『一部の編集には残ることがある』──Claudeの不可視透かしとC2PA署名、公式が明言した範囲と、まだ出ていない検出手段
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『一部の編集には残ることがある』──Claudeの不可視透かしとC2PA署名、公式が明言した範囲と、まだ出ていない検出手段

何が起きたのか Anthropicが公式サポート記事「How Claude marks AI-generated content」を公開し、Claudeの出力に機械可読なマーキングを施すことを明らかにしました(Anthropic公式サポート)。内容は二本立てです。テキストには「imperceptible watermark(知覚できない透かし)」をテキスト自体に織り込み、ファイル(.svg / .png / .jpg など)にはC2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)標準に準拠した署名付きprovenanceメタデータを付与します。 適用範囲が広いのが特徴です。公式記事はClaude Platform(API)、Claude、Claude Code、Claude Cowork、Claude Tagを列挙しており、地域は全世界。AWS、Google Cloud、Microsoft Foundry経由でもテキスト透かしは機能するとされますが、ファイルの署名付きメタデータは「may not be supported on every platform」と留保が付いています。 タイミングは明快です。公式記事は「Claude models launched in the EU on or after August 2, 2026 will support machine-readable marking at launch」と書いています(Anthropic公式サポート)。ローンチ時から対応するという約束は、EU AI Actの行動規範に関するセクション配下で、EU向けの文言として記されている点に注意が必要です。ただし同記事は別に「Marking will apply to output from supported models wherever Claude is offered, worldwide」とも述べており、マーキングの適用範囲そのものは全世界です。2026年8月2日より前にリリースされたモデルについては「The law includes a transition period for Anthropic models launched before August 2, 2026, and we’re working to add marking support for those models as well」と、法定の移行期間に言及しつつ対応中である旨が記されています。この2026年8月2日という日付は偶然ではなく、EU AI Act第50条の透明性義務の適用開始日と一致します(European Commission)。Anthropicはこの措置の根拠として、第50条(2)に対応する「Code of Practice on Transparency of AI-Generated Content」への署名を挙げています。 ...

2026年8月12日 · ひとりユニコーン
12個のシフトでHRT予想が崩れた──GPT-5.6 Proの寄与と、0.333032という綱渡りの不等式
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12個のシフトでHRT予想が崩れた──GPT-5.6 Proの寄与と、0.333032という綱渡りの不等式

何が起きたのか 2026年8月5日、arXiv に『Linear dependence of time-frequency shifts of a Schwartz function』(arXiv:2608.05044)が投稿されました。著者は Markus Faulhuber、Philipp Petersen、Jordy Timo van Velthoven、Felix Voigtlaender の4名です。アブストラクトは短く、こう書かれています。有限個の時間周波数シフトが線形従属になりうることを示し、これにより Heil・Ramanathan・Topiwala のいわゆる HRT 予想を反証する。特に、12個の時間周波数シフトからなる例を与える(arXiv:2608.05044 2026-08-05)。 HRT 予想は 1996 年に Proceedings of the American Mathematical Society に載った論文(Heil, Ramanathan, Topiwala, “Linear Independence of Time-Frequency Translates”, Vol. 124 No. 9, pp. 2787–2795)に由来する、時間周波数解析の中心的な未解決問題でした(JSTOR)。それが 30 年目に否定された、というのが事実の骨格です。 そしてこの論文には、1.2 節という短いセクションが置かれています。タイトルは “Usage of Large Language Models”。冒頭の一文はこうです。反例とその証明戦略は、著者らとの対話の中で大規模言語モデル、具体的には ChatGPT (GPT-5.6 Pro) によって開発された(arXiv:2608.05044 HTML版)。 この記事では、『AI が 30 年来の未解決予想を反証した』という一行を、論文本文と Terence Tao 氏のブログ記事に戻って分解します。何が反例なのか、モデルが出した部分はどこまでで、人間が書き直した部分はどこからか、そして『区間演算で厳密に保証された』という言葉が実際に保証している範囲はどこまでか、の3点です。 HRT 予想が主張していたこと 時間周波数シフト作用素を $\pi(z)$ と書きます。$z=(x,\omega)\in\mathbb{R}^2$ に対して、論文では次のように定義されています(arXiv:2608.05044 HTML版)。 ...

2026年8月10日 · ひとりユニコーン
保留100件・キュー50件・承認期限5分──Claude Codeのセッション間メッセージが既定で素通りするのは『同じ権限クラス同士』だけ
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保留100件・キュー50件・承認期限5分──Claude Codeのセッション間メッセージが既定で素通りするのは『同じ権限クラス同士』だけ

追記(2026-08-11): 公開後、公式の機能ページが更新され、v2.1.225 以降は別マシンの Remote Control セッションへ名前を指定して新規会話を開始できることが本文に明記されました(「Starting a conversation with a session on another of your machines requires Claude Code v2.1.225 or later」)。あわせて経路表から「送れるもの(返信のみ)」の列自体が削除されています。本文中の「機能ページは返信のみ」「公式情報同士の食い違い」に関する記述は、公開日 2026-08-09 時点の記録としてそのまま残します(当時の保存版)。なお Claude Code on the web への新規送信の可否は、現行ページでも明示されていません。 何が起きたのか Anthropicの公式ドキュメント「Message your other Claude Code sessions」が、Claude Code のセッション同士がメッセージをやり取りする機能を記載しています。要件は Claude Code v2.1.224 以降、対応OSは macOS と Linux(WSL 2 内の Linux を含む)で、ネイティブ Windows では提供されないと明記されています。同ドキュメントには「When a session meets the requirements, messaging is on with nothing to enable」とあり、要件を満たしたセッションでは有効化操作なしで動きます。 Claude が使うツールは 2 つだけです。到達可能なエージェントを列挙する ListAgents と、名前を指定して届ける SendMessage。ユーザーがこれらを直接呼ぶことはありません。9to5Mac も 2026-08-07 付でこの機能を取り上げています(9to5Mac 2026-08-07)。 ...

2026年8月9日 · ひとりユニコーン
署名は正規のままマルウェアが通った──keyv乗っ取りで.claude/settings.jsonにSessionStartフックが仕込まれた4時間
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署名は正規のままマルウェアが通った──keyv乗っ取りで.claude/settings.jsonにSessionStartフックが仕込まれた4時間

何が起きたのか 2026-08-04 09:35 UTC、npm レジストリに [email protected] が公開されました。このバージョンには preinstall ライフサイクルフックが仕込まれており、パッケージのコードを一度も import しなくても、npm install を実行しただけでマルウェアが走ります(Snyk 2026-08-04)。 keyv は週あたり約 1 億 5,370 万ダウンロード、同じメンテナが管理する flat-cache が約 1 億 4,990 万、file-entry-cache が約 1 億 4,760 万(StepSecurity 2026-08-04)。ESLint など広く使われるツールチェーンの間接依存として、多数の開発環境に入り込む位置にあります。 そして、この攻撃で最も読者に近い部分がここです。第2段ペイロードは .claude/settings.json の SessionStart フックと .vscode/tasks.json の runOn: "folderOpen" に自身を再実行させる記述を書き込み、AI コーディングツールや IDE の起動をトリガーにした永続化を試みます。さらに .claude/credentials.json、.cursor/credentials.json、.openai/auth.json、.anthropic/auth.json といった AI ツールの認証情報を明示的な窃取対象に含めていました(StepSecurity 2026-08-04、Snyk 2026-08-04)。 分単位のタイムライン Snyk は UTC の分単位で経緯を記録しています(Snyk 2026-08-04)。 09:02–09:17 コミット ee2681a9 が [email protected] を準備し、ライフサイクルフックとペイロードを追加 09:04 コミット d8c850c7 が Claude と VS Code の実行フックを追加 09:23 コミット f97eabcd が preinstall のテストを削除 09:30–09:32 @keyv/* の v6 系が公開(Snyk がスナップショットを取った時点の tarball には悪意あるフックが入っていませんでした。ただし SafeDep は 09:39:45 に @keyv/* 全体へペイロードが追加されたと記録しており、これらの 6.0.0 は最終的に GitHub がマルウェア指定し npm から削除されています。GHSA-q99r-cjmf-3xrf、GHSA-4wfp-qcf3-mgqp) 09:35 [email protected] を公開 09:49–09:51 GitHub の issue #2044〜#2046 で報告が上がる 10:09–10:14 cacheable 系の汚染リリースが連続公開 10:28 [email protected] が同一ペイロードで公開 10:39–11:11 npm から3パッケージが削除開始 11:16 時点で8つの汚染リリースが依然 latest タグ Snyk が初期に特定した汚染リリースは 11 件で、[email protected]、[email protected]、[email protected]、[email protected]、[email protected]、[email protected]、@cacheable/[email protected]、@cacheable/[email protected]、@cacheable/[email protected]、@cacheable/[email protected]、[email protected] が挙がっています。Socket は file-entry-cache を 11.1.7 として記載しており、ベンダー間で表記が一致していない点は注意が必要です(Socket 2026-08-04)。 ...

2026年8月5日 · ひとりユニコーン
33Bの動画モデルが最小42.5GBに縮んだ──MiniMax-H3の重み公開と、日本が『除外地域』に入っていないライセンス
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33Bの動画モデルが最小42.5GBに縮んだ──MiniMax-H3の重み公開と、日本が『除外地域』に入っていないライセンス

何が起きたのか MiniMax が動画生成モデル MiniMax-H3 の重みを Hugging Face で公開しました。日付は 3 つに分けて読む必要があります。H3 というモデル自体は 2026 年 7 月 31 日に MiniMax プラットフォームの API と Hailuo アプリで先行してローンチされており、ライセンス文書に記載された日付は 8 月 2 日、そして 8 月 3 日に公開されたのが「オープンウェイト」です。公式モデルカード(Hugging Face MiniMaxAI/MiniMax-H3)によると、H3 は 33B パラメータの dense・単一ストリーム Transformer で、テキスト・画像・動画・音声を入力に取り、4〜15 秒・最大 2K・24FPS の映像と 32kHz ステレオ音声を同時に生成します。推論精度は BF16 です。 ただし、この「最大 2K」はシステム全体の仕様です。今回ローカルに降りてきた中核の H3-Base について、モデルカードは「Generates audio and video based on the H3-Context-IR output, producing results at 768p resolution」と書いています。2K 化を担う H3-Regenerate-2K については「Due to the complexity of the system, this module is not yet open-sourced. We will release it once it is ready」と明記されており、今回のオープンウェイト公開には含まれていません。公式品質の 2K を得る経路は、現時点では MiniMax の API 側に残っています。 ...

2026年8月4日 · ひとりユニコーン
『AIが未解決問題を10個解いた』をLeanで検証する──許可公理は propext / Quot.sound / Classical.choice の3つだけ
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『AIが未解決問題を10個解いた』をLeanで検証する──許可公理は propext / Quot.sound / Classical.choice の3つだけ

何が起きたのか OpenAIが2026年8月1日、公式ページ「Ten advances in mathematics and theoretical computer science」で、内部モデル Astra が数学と理論計算機科学の10件の結果を出したと発表しました(OpenAI 2026-08-01)。いずれも主要部分に10年以上進展がなかった問題だとされています。 これまでのAI数学発表と決定的に違うのは、10件すべてに Lean 4 の機械検証可能な証明書が付いていることです。公式リポジトリ openai/ten-proofs には Lean 4.32.0 + mathlib による形式化が置かれ、lake exe cache get と lake build All で誰でも手元でビルドできます(openai/ten-proofs README)。論文本体は249ページで、10件すべての解の生成に要したトークンは Sol API レートで約2,000ドル相当だと報じられています(implicator.ai)。 この記事では「AIが数学を解いた」という見出しを、リポジトリの中身を実際に読むことで分解します。結論を先に言うと、このリリースで検証できる部分は過去のどのAI数学発表よりも厳密に検証でき、検証できない部分は依然としてはっきり残っています。そしてその境界線は、リポジトリの設定ファイルを開けば数行で確認できます。 10の結果は何なのか READMEに列挙されている10件と、対応するLeanモジュール名は次のとおりです(openai/ten-proofs README)。 高次元球充填──Cohn–Elkies閾値に到達する漸近上界の改善(SpherePacking.lean) 二元符号・球面符号──あらゆる最小距離において指数的に強い上界(MetricCodes.lean) 非ソフィック群──すべての群が有限置換近似を持つかという問題の解決(NonSoficGroup.lean) Connesの剛性予想──群フォンノイマン環が群を決定するという予想への反例(ConnesRigidity.lean) 算術回路計算量──permanentに対する $n^4/\log n$ のformula下界を含む新しい下界(Permanent.lean) 量子並列反復──任意の有限2人量子ゲームに対する指数的並列反復定理(QuantumParallelRepetition.lean) 最近ベクトル問題──多項式因子の近似困難性と格子への帰結(GapCVP.lean) Ehrhartの体積予想──各次元における鋭い最大体積(EhrhartVolumeInequality.lean) 多色Ramsey数──Erdős問題183を解決する超指数下界(MulticolorTriangleRamsey.lean) 極値グラフ理論──Erdős問題146と180を解決する反例(CompactnessAndDegeneracy.lean) 分野的な広がりが目を引きます。作用素環論(Connes剛性)、幾何学(球充填、Ehrhart)、群論(非ソフィック群)、量子計算量、格子暗号(CVP)、極値組合せ論が一つのリリースに同居しています。 球充填については、高次元での一般的な上界の指数が1978年の Kabatiansky–Levenshtein 以来更新されていませんでした。その古典的な形は $$\Delta_{\mathbb{R}^n} \le 2^{-(0.5990\ldots + o(1))n}$$というもので、今回の結果は Cohn–Elkies の線形計画限界の厳密な漸近レートを決定することで、この指数を1978年以来はじめて動かしたと説明されています(implicator.ai)。 非ソフィック群のほうは、soficityの概念が1999年に導入されて以来27年、非ソフィック群が存在するかどうかが未決着でした(implicator.ai)。ここで「明示的な構成が出た」という主張は、群論の側から見ればかなり大きな話になります。 Lean証明書は何を保証するのか──comparatorと3つの公理 ここが今回の技術的な核心です。「Leanで検証済み」という言葉は、実は複数の異なる強さを持ちえます。よくある抜け道は3つあります。 証明の途中に sorry を残す(未完成部分を穴として通す) 独自の公理を追加宣言する(定理を定義によって真にしてしまう) 形式化した命題が、実は元の未解決問題より弱い/別物である このリポジトリが面白いのは、これらのうち前2つを機械的に潰す仕組みを同梱している点です。lakefile.toml は mathlib に加えて leanprover 公式の Comparator v4.32.0 に依存しており、ComparatorChallenges/ ディレクトリに12個の設定ファイルが置かれています(READMEの10結果に対して12個なのは、二元符号と球面符号、およびcompactness予想と2-degenerateグラフがそれぞれ分割されているためです)。 ...

2026年8月2日 · ひとりユニコーン
デモ映像ではなく数字で読むGemini Robotics 2──全身操作45.7〜76.3%、グリッパー89.6%、電球を『締める』は36%
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デモ映像ではなく数字で読むGemini Robotics 2──全身操作45.7〜76.3%、グリッパー89.6%、電球を『締める』は36%

何が起きたのか Google DeepMindが2026年7月30日、ロボット制御モデル群「Gemini Robotics 2」を公開しました(Google DeepMind 2026-07-30)。公式ブログの見出しは「whole body intelligence」で、従来のように上半身の腕とハンドだけを動かすのではなく、足先から指先まで含めた全身を一つのモデルで制御する、という位置づけです。 注目すべきは、公式ブログが成功率の数字を素直に並べている点です。ヒューマノイドのApptronik Apollo(Inspire製ハンド搭載)での全身操作タスクは、棚から取る76.3%、机から取る68.4%、床から取る45.7%。一方、平行グリッパーを備えたFranka Duoでは、精密挿入89.6%、多様な工具のキッティング78.9%、一般的なピック・アンド・プレース74.2%(Google DeepMind 2026-07-30)。 そして多指ハンド(SharpaWave hand)の巧緻性タスクは、電球を「緩める」が92%であるのに対し、電球を「締める」は36%、ゴミ袋を縛るが44%、ジップロックの封が40%、ちりとりの扱いが32%と、多指ハンドの5タスクでは最低32%から最高92%まで約2.9倍の幅があります(Google DeepMind 2026-07-30)。デモ映像だけを見ると「電球を交換できるロボット」に見えますが、少なくとも今回の電球タスクでは、「緩める」92%に対して「締める」36%という大きな非対称が出ています。 3モデル構成——VLA・ER 2・On-Device 2の役割分担 今回のリリースは単一モデルではなく、役割の異なる3つのモデルで構成されています。ただし提供状況は揃っておらず、一般の開発者がAPIで利用できるのはER 2だけで、VLAとOn-Device 2はアーリーアクセスに限られます。 Gemini Robotics 2(VLA)は、視覚と言語の入力をモーター制御に変換する層です。公式のモデルページでは「テーブルトップロボットからフルヒューマノイドまで、あらゆる種類のロボットを知的に制御できる」と説明され、22自由度のハンドやグリッパーの扱いに言及しています(Google DeepMind モデルページ)。全身知能の中身は重心の動的管理で、静止姿勢から腕を伸ばすのではなく、「安全に踏み出し、しゃがみ、かがんで、散らかった現実空間を移動する」と記載されています。 Gemini Robotics ER 2 は高レベルの推論層です。公式ブログの表現では「ロボットの高レベルな脳」であり、「部屋を観察し、タスク完了に必要なステップを推論し、行動を実行するためにVLAと連携し、完了まで進捗を追跡する」役割を担います(Google DeepMind 2026-07-30)。Google公式のAPIドキュメントによれば、ER 2はGemini 3.5 Flashをベースとし、入力131,072トークン・出力65,536トークン、モデルIDは gemini-robotics-er-2-preview と、リアルタイム双方向ストリーミング用の gemini-robotics-er-2-streaming-preview の2種類です(Gemini API ドキュメント)。同ドキュメントは旧版のGemini Robotics ER 1.6が2026年8月末で停止することも明記しています。 Gemini Robotics On-Device 2 はロボット本体上でのローカル実行に最適化された軽量VLAです。ここが今回の実務的な目玉で、「数時間分のデータ、典型的には200例未満」で、まったく新しいロボットの身体構成へ適応できるとされています(Google DeepMind 2026-07-30)。 提供形態は3層に分かれます。ER 2はGoogle AI Studioで利用可能かつGemini Enterprise Agent Platformでプライベートプレビュー、VLAとOn-Device 2はアーリーアクセスパートナー向けに限定されています(Google DeepMind 2026-07-30)。つまり「計画する脳」にあたるER 2は公開プレビューとして一般の開発者が試せる一方、「体を動かす脊髄」にあたるVLA群は限定提供にとどまる構造です。 LLMエージェントとの相似——プランナーと実行器の分離 この3層構成は、この1年でLLMエージェント設計が収束してきた形とほぼ同型です。長い推論と計画を担う大きなモデルが、短いレイテンシで大量に呼ばれる小さな実行モデルを指揮する。ER 2がツール呼び出し(function calling)に対応し、ロボット固有のAPIと組み合わせてマルチステップのタスクを組み立てられる、とドキュメントに記載されているのは、まさにそのオーケストレーターの役割です(Gemini API ドキュメント)。 ...

2026年7月31日 · ひとりユニコーン
『AIが暗号を破った』を分解する──HAWK鍵回復はSVP次元n/2+1へ、7ラウンドAESは2^99→2^89.3
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『AIが暗号を破った』を分解する──HAWK鍵回復はSVP次元n/2+1へ、7ラウンドAESは2^99→2^89.3

何が起きたのか Anthropic は2026年7月28日、Claude Mythos Preview を使った暗号解析の結果を公開しました(Anthropic 2026-07-28)。中身は2件です。 NIST の追加署名方式公募で第3ラウンドに残っているポスト量子署名 HAWK に対する鍵回復攻撃の改良。公式ページは「実効鍵長を2分の1にする」と表現し、HAWK-256 の攻撃コストが $2^{64}$ から $2^{38}$ に下がるとしています。 AES-128 の7ラウンド縮約版に対する meet-in-the-middle 攻撃の高速化。Möbius Bridge と名付けられたフィンガープリント手法により、既存の最良攻撃比で200〜800倍速くなったとしています。 同じページには、両方について「これらの結果はいずれも今日のコンピュータシステムに実用上の影響を与えない。本番ソフトウェアを変更する必要はない」と明記されています。HAWK は候補方式であって配備されておらず、AES 攻撃は全10ラウンドのうち7ラウンド版に対するものだからです。 以下では、公開された2本の技術論文 PDF を直接読んだうえで、この2つの数字が具体的に何を指しているのかを分解します。 HAWK──鍵回復がSVP次元 n/2+1 に落ちる 論文は「HAWK-n Key Recovery Reduces to SVP in Dimension n/2 + 1」(Zygimantas Straznickas、Stephen A. Weis、Anthropic)です(HAWK鍵回復論文 PDF)。 HAWK は2の冪の円分環上の module Lattice Isomorphism Problem(module-LIP、格子同型問題のモジュール版)に安全性を置く格子署名で、浮動小数点を使わない署名処理と小さな鍵が売りです。論文の導入部によれば、NIST の追加署名公募で第3ラウンドに進んだ唯一の格子ベース候補です。 従来の最良の鍵回復攻撃は、ランク $2n$ の鍵格子に対して BKZ 格子簡約を直接かける方法でした。論文の中心は、この次元を半分にする点にあります。鍵格子には $\tau: \zeta \mapsto -\zeta$ というガロア対合に由来する非自明な自己同型があり、それが公開鍵だけから計算できる別の格子(コサイクル格子)の最短ベクトルとして取り出せる、という構成です。この格子は $$ \sqrt{n/4}\,\mathbb{Z}^{n/2+1} \oplus \sqrt{n/2}\,\mathbb{Z}^{n/2-1} $$と等長であることが示され、Ducas のブロック簡約がこのクラスに対して次元 $n/2+1$ の厳密 SVP オラクル呼び出しで動きます。つまり必要な次元が ...

2026年7月29日 · ひとりユニコーン
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