何が起きたのか
2026年3月末のAtmosphereカンファレンスで、Blueskyチームが新しいAIアプリ「Attie」を初公開した。Blueskyの元CEO・現Chief Innovation Officer(CIO)のJay Graber氏と、CTOのPaul Frazee氏がプレゼンテーションを行い、カンファレンス参加者が最初のベータテスターとなる(TechCrunch、2026年3月28日報道)。
AttieはBlueskyアプリとは別のスタンドアロン製品だ。暫定CEOのToni Schneider氏はTechCrunchの取材で「Blueskyアプリの中に機能を追加したのではなく、Jayの新チームが作った初の独立プロダクトだ」と説明している。
裏側ではAnthropicのClaude(LLM)が動いており、AT Protocol(atproto)上に構築された「エージェント型ソーシャルアプリ」という位置づけだ。
Attieで何ができるのか
Attieの核心機能は、自然言語でカスタムフィードを作れることだ。
通常、Blueskyのカスタムフィードを構築するにはコードを書く必要がある。AT Protocolの仕様に従い、フィードジェネレーターを実装し、投稿のURIリストを返すサーバーを用意する──開発者以外にはハードルが高い作業だ。
Attieはこのプロセスを、AIチャットボットとの会話に置き換える。「最近話題のAI関連の投稿だけ見たい」「フォロワー100人以上のアカウントの技術系ポストを集めて」といった自然言語の指示で、フィードが構成される。
Schneider氏は「コードを書いたり、フィードの設定方法を知らなくても、自分でコントロールし、形作ることができる」と述べている(TechCrunch、2026年3月28日)。
Attieにサインインする際はAtmosphereログイン(atproto上のアプリ共通アカウント、Blueskyを含む)を使う。BlueskyとAtmosphereのエコシステムはオープンシステムとしてデータを共有しているため、Attieはユーザーの過去の投稿や興味関心を即座に把握できる。
将来の構想──「vibe-code」でソーシャルアプリを作る
Attieの現在の機能はカスタムフィードの構築と閲覧だ。作成したフィードは、後からBlueskyや他のatprotoアプリ内でも利用可能になる。
TechCrunchの報道によると、将来的にはAttieのユーザーが自分のソーシャルアプリを「vibe-code」(自然言語プログラミング)で構築したり、他のユーザー向けのツールを作ったりできるようにする計画がある。ただし、これは現時点での構想であり、具体的なリリース時期は発表されていない。
Graber氏のCEO退任とAttie開発の経緯
Attieの背景には、Graber氏のCEO退任がある。
2026年3月、Blueskyは創業者のGraber氏がCEOを退き、CIO(Chief Innovation Officer)に就任したことを発表。後任の暫定CEOにはAutomattic(WordPress.com運営元)の元CEOであるToni Schneider氏が就いた(Reuters、CNBC、2026年3月9日報道)。Schneider氏はBlueskyの出資者であるTrue Venturesのパートナーでもある。
Schneider氏はTechCrunchに対し、Graber氏がCEO業務から離れた理由を「もっと作りたいものがあることに気づいた。CEO業務に忙殺されていた時間を、開発に使いたいと感じた」と説明している。Graber氏とチームがAttieの開発を始めたのは、CEO退任を決めたのとほぼ同時期の数ヶ月前だという。
「AIはプラットフォームではなく人に奉仕すべき」
Graber氏はAttieの発表にあたり、大手プラットフォームのAI活用を批判している。
「今日、AIは大手プラットフォームが自分たちのために使っている。ユーザーのアプリ滞在時間を伸ばし、データを収穫し、アルゴリズムを支配するために」
「AIは、プラットフォームではなく人に奉仕すべきだ。オープンプロトコルは、この力をユーザーの手に直接渡す」(TechCrunch、2026年3月28日)
X(旧Twitter)がユーザーの投稿をAI学習に利用する方針を取っているのに対し、Blueskyは2024年11月に「ユーザーコンテンツを生成AIの学習に使わない」と宣言した(TechCrunch、2024年11月15日報道)。AIはコンテンツモデレーションやDiscoverフィードのアルゴリズムに内部利用されているが、これらは生成AI学習とは異なる用途だ。
ただし、重要な留意点がある。BlueskyはオープンなAPIを持つ公開ネットワークであり、第三者がAPIやスクレイピングでデータを取得し、AI学習に利用することまでは防げない。2024年11月にはHugging Face上にBlueskyの投稿100万件を含むデータセットが公開される事態も発生した(Medianama、Dataconomy報道)。「Bluesky自身は学習に使わないが、エコシステム全体の保護は不完全」というのが現実だ。
1億ドルのSeries B──3年以上の運営資金
Attieの発表と同時期に、Blueskyは1億ドルのSeries B資金調達を公表した。このラウンドは2025年4月に完了しており、Bain Capital Cryptoがリードし、Alumni Ventures、Bloomberg Beta、True Venturesなどが参加した(Bluesky公式ブログ、2026年3月19日)。
Schneider氏はTechCrunchに対し、「3年以上の運営資金がある。これはエコシステム全体にとっての安定性と安心感を意味する」と述べている。
ユーザー数は2026年3月時点で4,340万人に達しており、Series A時点の1,300万人から3倍以上に成長した(FinanceFeeds報道)。
暗号資産は導入しない
Blueskyの出資者にはBain Capital CryptoをはじめとするWeb3系の投資家が複数含まれるが、Schneider氏は暗号資産(仮想通貨)機能の導入を明確に否定している。
「暗号資産に惹かれた投資家たちは、分散化という理念に共感して投資している。ブロックチェーン上の超分散型プロジェクトに投資していた人たちと同じで、分散型ソーシャルに可能性を感じている」(TechCrunch、2026年3月28日)
一部のBlueskyユーザーが懸念していた「アプリが暗号資産詐欺で溢れる」「決済ツール化する」といったシナリオは、現時点では計画にない。
収益化の模索──WordPressモデルの可能性
Attieが有料になるかどうかはまだ決まっていない。現時点ではプライベートベータの段階だ。
Schneider氏は収益化のアイデアとして、サブスクリプションやホスティングサービス(自分のコミュニティをプロトコル上で運営したいユーザー向け)に言及している。
Automatticの元CEOとして、Schneider氏はAtmosphereのエコシステムをWordPressに例えた。
「中心にあるのは完全にオープンなシステムで、誰でも参加できる。WordPressではこれが巨大なエコシステムに成長し、年間100億ドル以上が流通している。Atmosphereにも同じような可能性がある」(TechCrunch、2026年3月28日)
よくある質問
Q: Attieは今すぐ使えますか?
いいえ。現在はAtmosphereカンファレンス参加者限定のプライベートベータです。一般公開の時期は発表されていません。
Q: Blueskyアカウントがなくても使えますか?
Atmosphereログイン(atproto上のアカウント)が必要です。Blueskyのアカウントがあればそれを使えます。
Q: Attieで作ったフィードはBlueskyで見られますか?
将来的にはBlueskyや他のatprotoアプリ内でも閲覧可能になる予定ですが、現時点ではAttie内での表示に限定されています。
Q: BlueskyはユーザーのデータをAI学習に使いますか?
Bluesky自身は「ユーザーコンテンツを生成AIの学習に使わない」と宣言しています。ただし、BlueskyはオープンなAPIを持つ公開ネットワークであり、第三者によるデータ取得・AI学習利用を技術的に完全には防止できません。
主要出典
- TechCrunch「Bluesky leans into AI with Attie, an app for building custom feeds」(2026年3月28日)
- Bluesky公式ブログ「Bluesky’s 2025 $100M Series B Lays Foundation for Open Social Web」(2026年3月19日)
- CNBC「Bluesky CEO Jay Graber steps down」(2026年3月9日)
- TechCrunch「Unlike X, Bluesky says it won’t train AI on your posts」(2024年11月15日)
- Medianama「Bluesky Says No to Training AI on User Data—But Is That Enough?」(2024年11月)
- Gizmodo「Bluesky Has a New App, and It’s All About AI」(2026年3月)