デモ映像ではなく数字で読むGemini Robotics 2──全身操作45.7〜76.3%、グリッパー89.6%、電球を『締める』は36%
何が起きたのか Google DeepMindが2026年7月30日、ロボット制御モデル群「Gemini Robotics 2」を公開しました(Google DeepMind 2026-07-30)。公式ブログの見出しは「whole body intelligence」で、従来のように上半身の腕とハンドだけを動かすのではなく、足先から指先まで含めた全身を一つのモデルで制御する、という位置づけです。 注目すべきは、公式ブログが成功率の数字を素直に並べている点です。ヒューマノイドのApptronik Apollo(Inspire製ハンド搭載)での全身操作タスクは、棚から取る76.3%、机から取る68.4%、床から取る45.7%。一方、平行グリッパーを備えたFranka Duoでは、精密挿入89.6%、多様な工具のキッティング78.9%、一般的なピック・アンド・プレース74.2%(Google DeepMind 2026-07-30)。 そして多指ハンド(SharpaWave hand)の巧緻性タスクは、電球を「緩める」が92%であるのに対し、電球を「締める」は36%、ゴミ袋を縛るが44%、ジップロックの封が40%、ちりとりの扱いが32%と、多指ハンドの5タスクでは最低32%から最高92%まで約2.9倍の幅があります(Google DeepMind 2026-07-30)。デモ映像だけを見ると「電球を交換できるロボット」に見えますが、少なくとも今回の電球タスクでは、「緩める」92%に対して「締める」36%という大きな非対称が出ています。 3モデル構成——VLA・ER 2・On-Device 2の役割分担 今回のリリースは単一モデルではなく、役割の異なる3つのモデルで構成されています。ただし提供状況は揃っておらず、一般の開発者がAPIで利用できるのはER 2だけで、VLAとOn-Device 2はアーリーアクセスに限られます。 Gemini Robotics 2(VLA)は、視覚と言語の入力をモーター制御に変換する層です。公式のモデルページでは「テーブルトップロボットからフルヒューマノイドまで、あらゆる種類のロボットを知的に制御できる」と説明され、22自由度のハンドやグリッパーの扱いに言及しています(Google DeepMind モデルページ)。全身知能の中身は重心の動的管理で、静止姿勢から腕を伸ばすのではなく、「安全に踏み出し、しゃがみ、かがんで、散らかった現実空間を移動する」と記載されています。 Gemini Robotics ER 2 は高レベルの推論層です。公式ブログの表現では「ロボットの高レベルな脳」であり、「部屋を観察し、タスク完了に必要なステップを推論し、行動を実行するためにVLAと連携し、完了まで進捗を追跡する」役割を担います(Google DeepMind 2026-07-30)。Google公式のAPIドキュメントによれば、ER 2はGemini 3.5 Flashをベースとし、入力131,072トークン・出力65,536トークン、モデルIDは gemini-robotics-er-2-preview と、リアルタイム双方向ストリーミング用の gemini-robotics-er-2-streaming-preview の2種類です(Gemini API ドキュメント)。同ドキュメントは旧版のGemini Robotics ER 1.6が2026年8月末で停止することも明記しています。 Gemini Robotics On-Device 2 はロボット本体上でのローカル実行に最適化された軽量VLAです。ここが今回の実務的な目玉で、「数時間分のデータ、典型的には200例未満」で、まったく新しいロボットの身体構成へ適応できるとされています(Google DeepMind 2026-07-30)。 提供形態は3層に分かれます。ER 2はGoogle AI Studioで利用可能かつGemini Enterprise Agent Platformでプライベートプレビュー、VLAとOn-Device 2はアーリーアクセスパートナー向けに限定されています(Google DeepMind 2026-07-30)。つまり「計画する脳」にあたるER 2は公開プレビューとして一般の開発者が試せる一方、「体を動かす脊髄」にあたるVLA群は限定提供にとどまる構造です。 LLMエージェントとの相似——プランナーと実行器の分離 この3層構成は、この1年でLLMエージェント設計が収束してきた形とほぼ同型です。長い推論と計画を担う大きなモデルが、短いレイテンシで大量に呼ばれる小さな実行モデルを指揮する。ER 2がツール呼び出し(function calling)に対応し、ロボット固有のAPIと組み合わせてマルチステップのタスクを組み立てられる、とドキュメントに記載されているのは、まさにそのオーケストレーターの役割です(Gemini API ドキュメント)。 ...